内と外のほどよい関係
家庭という漢字の意味
家庭(家+庭)という漢字が教えてくれているとおり、住まいには家だけでなく庭も必要だと先代は知っていました。しかしながら昨今では、一体で考えられることがあまり見受けられなくなってしまいました。四季折々の木・花・鳥・緑・風・空・雲・雨・太陽・星・月を楽しめる外部空間と、心地よい内部空間を一体化させることで、本来の自然と共生する生活が育まれるのです。「お庭の手入れが大変そうだわ・・・」という声が聞こえてきそうですが、それも生活の一部に取り入れてください。きっと退屈が無くなるはず?住まいは未来の子供達にとって社会に出るための訓練場であり、気持ちのいい家と緑豊かな庭が成り立ってこそ、幸せな家庭が築けるのではないでしょうか。
家と庭がうまく調和された空間こそが家庭の根底だと思います。そんな調和の取れた住環境の気持ちよさを、是非体感いただきたいと思います。
外を内に取り入れる設計
まず外を内に取り入れる必要性は何か。内部(家の中)だけで完結してしまうと、広さはそれだけでしかありません。さらに閉塞感が生まれ、どこか窮屈な印象になってしまうかも知れません。住まい手の気持ちはどことなく内気になり、子供にも影響を与えかねません。
もっと積極的に外部空間を取り込んだ住まいにいたしましょう。まずは窓の配置からです。開口部は開けられるから開口するのではなく、きちんと計画することが大切。 採光・採風はもちろんのこと、風の通る道、ご近所への配慮、借景、庭や植栽との兼ね合い、自然の風景などを考慮した上で初めて窓が開けられます。窓の大きさも大切で、無駄に開け放つようなことはしません。ONとOFFの領域を弁えることが重要で、時には絞る開口にすることで、気持ちの良い空間になる場合もあるのです。屋外デッキは室内床の繋がりからリビングの延長となり、更に広く感じることが出来ます。外のリビングとして活用することで日常ががより豊かになることでしょう。視線も気持ちも外へ開け放てばきっと気分も明るくなり、気持ちが良くなって笑顔が増えるはずです。
お庭の設計の真意
弊社では家単体の設計ではなく、作庭も視野に入れた設計を義務としております。その真意として、森林浴に行ったときのあのなんともいえない気持ち良さを、普段の生活に溶け込ませるため。COMODO建築工房では、間取りの設計段階から植栽の設計を始めています。いかに生活に緑を溶け込ませるか、癒しの要素として活かせるのか、植栽によっていかに住宅を見栄えさせるかなどバランスを考慮しています。植栽には日々の生活に変化の潤いを与えてくれることに期待しています。
それでは植物を植える効果を挙げてみましょう。夏に木陰を歩くと風が抜けてゆく。これが日本特有の涼しさであると思います。エアコンの涼とはまるで違い、気温が低いから涼しく感じるのとは意味が違いますし、価値も違います。人間が夏に汗をたくさんかくのは、汗が蒸発する際に気化熱を奪うことで放熱され、その調整で体温を下げようとしています。植物も暑さで枯れぬよう、一生懸命汗をかいています。つまり、葉から水蒸気を出して温度を下げているのです。木陰にはいるとひんやり感じられるのはこの蒸散作用のおかげ。そこに時折ふわっと柔らかい風が吹けば私達は汗が蒸発してはじめて涼を感じさせてくれるのです。木陰のようなひんやりとした環境と、時折吹き抜ける風を住まいの味方に取り込むことが出来たならば、それがしのぐ技術となりうるのだと思います。